このたびスタートしたminikura(ミニクラ)の「お片付けサービス」は、整理収納アドバイザーがご自宅を訪問し、お客様それぞれの暮らしに合った片付けを提案・実施するサービスです。
前編に引き続き、今回も同サービスで実際に片付けを手がける整理収納アドバイザーの内藤理恵子さんにお話を伺っていきます。
片付けの場面で大活躍する「ブルーシート」の効能、わかりやすい目印として「テプラ」でモノの収納場所を明記しておく重要性など、整理収納を成功させるためのヒントやコツが満載のインタビュー後編、最後までお楽しみください!
片付け作業を急加速させる小道具「ブルーシート」
── 前編では、片付けに臨む際の心構えや取り組み方の基本など、概論的な内容を中心にお話しいただきました。ここからは、もう少し具体的な方法を伺っていきます。実際に片付けを進めるにあたり、まず最初にやらなければならないことは何でしょうか?
内藤 片付けなければならないモノがどんな内容で、どのくらいの量があるかを把握することですね。例えば寝室を片付けるとして、そこにどんなモノが、どの程度の分量で収まっているのか。まずは一度、全部取り出して並べてみる。そうしないと、片付けるモノの全貌が把握できません。
そこで非常に便利なのが、100円ショップなどで購入できるブルーシートです。それを廊下やベッド上などの空いているスペースに敷いて、そこにモノをまとめていきます。
── ブルーシートにまとめておく理由は?
内藤 別にブルーシートではなく、レジャーシートなどでもよいのですが「この上にあるものは絶対に片付けなければいけない」という状況になると「いる/いらない」のジャッジが進めやすくなるからですね。やるべきことがハッキリするので。
例えば「夫が使う書斎のクローゼット内にある衣装ケースを整理する」となって、その衣装ケースひとつだけをチマチマと整理していても、せいぜいモノを入れ替えたり「これは確実にもう着ないから、捨てよう」とシャツを数枚処分したりするくらいで、なかなか片付けが進みません。
「このクローゼットを片付ける」「このラックを片付ける」と決めたなら、そこに入っているモノは全部取り出して、ブルーシートに並べてしまう。その際、ただ取り出して無造作に積み上げるのではなく、並べながら分類していくのがコツです。Tシャツ、ズボン、アンダーウェアなど、種類別にまとめていきます。
そうして種類別にまとめる過程で「これはいらない」とすぐ判断できれば、どんどんゴミ袋に入れていきます。その後、ブルーシートに置かれたモノを1点ずつ「これは必要か、不要か」とジャッジしていきます。
── 前編でお話があった「1年以内に使ったか」「本当に必要なモノなのか」を判断基準に整理していくわけですね。
内藤 はい。片付けが苦手な方は、とにかく「まだ使えるか/もう使えないか」で処分するかどうかを判断してしまいがちなのですが、それではなかなかモノが減らせません。私が片付けをお手伝いするときに重要視しているのは「実際に使っているか」です。
まだそんなに傷んでもいないし、使えるモノかもしれないけど、実際に使うこともないままただ衣装ケースにしまわれているのであれば、それは不要品といえます。「なくても生きていける」「日々の生活で困ることはない」ということなら、「これ、もういりませんよね?」という流れになります。一緒にひとつずつモノを確認しながら「本当に必要ですか?」「これはどうですか?」と尋ねていくと、ブルーシートの効果も相まって「そうですね。捨ててしまいましょう」と判断してくれるユーザー様は多いです。
モノを全部取り出して、ブルーシートに種類別に並べていく効能をもう一点挙げるなら「そういえば、他の部屋にも同じようなモノがしまってあったな」と記憶を呼び起こすことができること。私も必ず「Tシャツは、これで全部ですか?」「他の部屋に、同様のアイテムがありませんか?」と確認しながら作業を進めるようにしているのですが「とにかく全部のアイテムをいったん集約させて、整理する」ことに意識が向くだけで、存在を忘れていたモノ、放置されたままになってモノが、どんどん引き出されていくんです。
── なるほど。ということは、ある部屋の収納一カ所を整理し始めるだけで、家全体のモノの整理もスタートすることになるのですね。
内藤 その通りで、家の全体的な整理へと発展していきます。もちろん、まずは片付けると決めた部屋での作業を中心に進めていきますが、その過程で他の部屋の整理も始まるケースはとても多いですね。私も状況を見ながら「では、あちらの部屋の片付けも同時に進めてしまいましょうか」と臨機応変に対応していきます。
── モノが明らかに減っていく、収納がすっきりしていく様を目の当たりにすると、気持ちも乗ってきそうです。
内藤 そうですね。作業が進んでいくと、レポート記事にあった「片付けの神様降臨」状態になるユーザー様は多いですよ。当初は処分するかどうか迷うことが多かった方でも、「これは不要です」と判断が早くなって、片付けのピッチがどんどん上がっていきます。ある程度のところまで作業が進むと、私がいちいち確認しなくても「これはいらない……これもいらない」と次々に判断できるようになる。ここまでくれば、もう安心です。
片付け・収納は「二択」の積み重ねにすぎない
── 相談しながら作業が進められるのは安心感もありますが、片付け中に「これはいりますか?いりませんか?」と問われることにプレッシャーを感じてしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか?片付けに強い苦手意識がある方、モノに執着してしまう方、捨てることに抵抗がある方も少なからずいるのではと思うのですが。
内藤 私は事前の打ち合わせ時や作業中、そのユーザー様がどんなタイプの方なのか、どう寄り添っていくと気分よく片付けが進められそうか、常に意識を向けています。ユーザー様のご希望をできるだけ叶えられるよう取り組みますから、思ったことは何でも伝えていただきたいですし「判断が難しいな」と感じる部分は遠慮なくお任せいただきたいですね。
なかには、最初にモノを全部取り出す作業をしている段階で「ちょっとツラい」「気持ちが落ちてしまう」とおっしゃる方もいます。そういった場合は「大丈夫ですよ。私のほうでブルーシートに並べるまでは作業を進めておきますから、他の部屋で休んでいてください」「ある程度、片付いたところでお呼びします」といった形で、いったん作業から離れていただくケースもあります。
「片付けなければならないことは理解しているけど、気持ちがついてこない」「モノを処分するのは、どうしても抵抗がある」という方がいらっしゃることは重々承知していますから、ユーザー様のタイプに応じてアプローチを変えながら、作業を進めていきます。
それに、これまで乱雑にクローゼットなどに詰め込まれていたモノが種類別にブルーシートにまとめられた状態になれば、意外と冷静に「いる/いらない」を判断できるようになることが大半です。片付けに苦手意識を持っている方は、種類も用途も異なる品々をいっぺんに整理しようとして、頭のなかがグチャグチャになり、煮詰まってしまうケースが多いです。種類別や用途別でまとめられた状態になれば、あとは「いる/いらない」の判断をするだけですから、気持ち的にもラクになりますよね。
── 片付けとは、突き詰めてしまえば「いる/いらない」の二択さえできれば進められる、と。
内藤 その通りです。片付けは二択の積み重ねにすぎません。私が「要/不要」を尋ねる場面では、シャツやズボンといった種類別に仕分けるだけでなく、さらに夏物、冬物と季節ごとに分けるなど、できるだけ細分化した状態で確認していただけるようにしているんです。条件が絞られた状態になるほど、判断も下しやすくなりますからね。
そうしてモノを分類して、残すモノと処分するモノを仕分けした後、続けて収納作業に入っていきます、そこでもユーザー様と相談しながら、お好みや生活スタイルなどに合わせて、使いやすいように収めていきます。そこでも「こういう形で収納しますか?それとも、こうしたほうが使いやすいですか?」と、結局は二択で判断していただくことが大半です。
あまり身構えることなく「整理収納アドバイザーの質問に答えていくだけ」と気楽に考えていただきたいです。
収納する場所を決めたなら、使用後は必ず同じ場所に戻す
── 収納の話題が出たところで伺いたいのですが、モノをしまう際に「これだけは気をつけておきたい」といったポイントがあれば、教えてください。
内藤 いったんしまう場所を決めたら、使った後は必ず同じ場所に戻すことですね。せっかくモノを減らして部屋の中が片付いたのに、いつの間にかまた散らかった状態に戻っていた……なんてこともあるんです。要するにリバウンドしてしまったケースといえますが、そうなってしまう原因の大半が「使い終わった後、元の場所にモノを戻さなかったから」なんです。そして、前編でも触れたように「元の場所に戻さない(というより、戻せない)」ことにも、やはり理由がある。収納方法が自分に合っていなかったわけです。
よくあるのは「所定の収納場所をいちいち意識するのが面倒になって、空いているところへ適当にしまうようになり、気づいたときには引き出しの中がグチャグチャになっていた」「そこから気が抜けてしまい、小物類をテーブルや机の上に無造作に置いたり、脱いだ服を椅子や床に放置したりするようになってしまった」「そうしてある日、冷静に部屋を見回すと、全体が以前と同じ乱雑な状態に戻っていた」という展開でしょうか。
そうした流れに陥ることを回避するには「必ず、決めた場所にしまう」を習慣化するために、テプラでそこにしまうものを明記して、引き出しやラックに貼っておく方法がとても効果的です。モノの住所を明らかにしておき、しまうときに迷わないようにしておく。表記は、できるだけ具体的なほうがいいですね。「○○類」「○○関係」のような曖昧な表記ではなく「夏物シャツ」「秋冬用ズボン」など、迷いようがない書き方をするのがベターでしょう。
テプラがなければ、インデックスシールやビニールテープなどに手書きする形でもOKです。決まった場所に戻すことが習慣として身に付いて、もうテプラやシールがなくても迷わずしまえるようになったら剥がしても構いません。私が片付けをお手伝いするときは、「どう表記するとわかりやすいか」「ずっと貼り続ける前提でテプラにするか、慣れたら剥がすことを踏まえて手書きのシールにするか」など、ユーザー様の好みや整理スタイルに応じた方法を提案しています。
その他、どういうしまい方をするか、収納後の管理ではどういう点に気をつけておくべきか、といった片付け後の対応についても、ユーザー様ごとに最良だと思えるやり方を相談しながら決めていきます。整理収納アドバイザーはさまざまな収納方法、しまい方のコツを知っていますから、自分に合った収納方法がきっと見つかるはずです。
── minikura(ミニクラ)の「お片付けサービス」では、ユーザー様それぞれの事情や好みに即した形で、理想的な片付け方や収納方法を提案してもらえる、ということですね。
内藤 はい。整理収納の世界には、基本的な片付け方、よく用いられる整理方法といった「王道」があります。片付け指南の書籍やウェブコンテンツなどで一般的に紹介されているようなやり方ですね。とはいえ間取りや家族構成、持ちモノの内容など条件は個別に異なりますから、お悩みや課題も人それぞれで、対応策も違ってきます。
私たちはユーザー様と対話しながら、もっとも適した形で整理収納を進めていきますから、安心してお任せください。