このたびスタートしたminikura(ミニクラ)の「お片付けサービス」は、整理収納アドバイザーがご自宅を訪問し、お客様それぞれの暮らしに合った片付けを提案・実施するサービスです。
そこで今回は、同サービスで実際に片付けを手がける整理収納アドバイザーの内藤理恵子さんにご登場いただき、片付けにまつわるお悩みの解決方法、整理収納に関するポイントなどを伺っていこうと思います。
minikura(ミニクラ)の「お片付けサービス」が気になる方はもちろんのこと、片付けや収納などでお悩みがある方にも参考になる話題が満載のインタビュー。前後編の2回に渡りお届けします!
「これは本当に必要なモノ?」という問いから全てが始まる
── minikura(ミニクラ)の「お片付けサービス」は、専門家である整理収納アドバイザーの力を借りて「家の中がなかなか片付かない」「モノの整理が上手くできない」といった部屋の整理収納にまつわるお悩みを解決するサービスです。そもそも、片付けや整理はなぜ自分だけで進めようとしても上手くいかないことが多いのでしょうか?
内藤 ひと言で表してしまうなら「持ちモノに優先順位が付けられていない」ことが、大きな理由だと思います。自分にとって本当に必要なモノなのか、どのくらいの使用頻度、重要度があるモノなのか……それが自分のなかで腑に落ちていない。だから「整理しようとしても、全部大切なモノに思えてしまうから処分できない」「とりあえず押入れの片付けを始めてみたけど、なんとなく収納場所を入れ替える程度で終わってしまい、結局モノが減らせなかった」といった結果になってしまうのでしょう。
「モノが捨てられない」「片付けられない」という方を見ていると、そもそもそれが不要であることに気づいていない、というケースがほとんどなんですね。だから、私が片付けをお手伝いする際には「これって本当に必要ですか?」「最後に使ったのはいつですか?本当にまた使いますか?」などとユーザー様に問いかける場面が多くなります。
ご本人が気づいていないだけで、実は不要なモノってたくさんある。それに気づいていただけるだけで、片付けや整理は格段にはかどるようになります。ご本人に気づいてさえいただければ「いる/いらない」のジャッジがどんどん進みますから、あとはモノを整理して効率よく収納していくだけ。つまり「本当に必要なモノを見極める」という最初のハードルを越えられるかどうかがカギなんです。
ご自分でそれができればよいのですが、難しい場合は私たち整理収納アドバイザーのような専門家に遠慮なく手伝いを依頼することをおすすめします。自分だけで何とかしようとして、なかなか片付けられず悶々としてしまう。それで時間だけが過ぎていく。そうした状況が続いているのであれば「専門家に頼る」という選択肢があることを、ぜひ知っておいていただきたいです。
何事にも理由がある。片付けも然り
── 「本当に必要なモノを見極める」ことが大切なのはわかるのですが、実際にはそう簡単ではない場面も多いと思います。見極めに必要な判断基準、指針のようなものはありますか?
内藤 片付けの目的は何か、どの程度モノを減らす必要があるかなど、ユーザー様それぞれに事情や求める暮らしぶりには違いがあります。それ次第でいろいろなアプローチが考えられるのですが、端的には「1年以内に使ったかどうか」を基準にするといいでしょう。1年以上使っていなければ、少なくともそれはいまの自分の生活のなかで不要なモノだと判断することができる。もっと言ってしまうと「1年以上使わなかった理由」があるから、使わなかったわけです。それに気づくことが大切です。
──「使わなかった理由」ですか。興味深い視点です。
内藤 ええ。少し大袈裟な表現になりますが、人間がする行為の全てには、ちゃんと「理由」があります。毎日の暮らしでは「なんとなく、こうしておいた」「とりあえず、そうなった」と適当に流してしまうことも多いのですが、きちんと意識していないだけ、しっかり目を向けていないだけで、物事にはちゃんと理由があるんですよ。片付けや整理収納も然りです。
片付けをお手伝いしていると「これ、1年以上使ってないけど、なんか処分したくないんですよね」といったユーザー様の発言をよく耳にします。その際、私は必ず「どうして使わなかったのですか?」と尋ねることにしています。すると「いや、他にも同じようなモノがあるから、それで代用していた」「存在自体を忘れていた」「なければないで、問題なく生活できた」と、何かしらの理由が出てくる。
それを受けて「そうであれば、これって不要じゃないですか?」「いま日常的に使っている他のモノで対応すれば問題ないのでは?」と私は提案します。ご本人も意識していなかった「理由」を明確にすると、「そうですね、たしかに不要だと思います」「捨てることにします」と納得していただけることがとても多いです。
もちろん、ユーザー様が「それでも捨てたくない。今後はちゃんと使うことにする」「どこにしまったのかわからなかったから諦めていたけど、今回の片付けで見つかったので、これからは活用したいと思う」とおっしゃるなら、「わかりました。では、絶対目に入る場所、すぐに使える場所にひとまず仮置きしておきます」「あくまで仮置きなので、今後『やはり使わないな』という状況になれば、処分を考えてくださいね」と伝えます。
「使うモノ」「使わないモノ」「思い出」という仕分け方
── 「使わなかった理由」が明らかになったとして、「使わないだろうけど、捨てたくない」「どうしてもとっておきたい」という気持ちが拭えない場合はどうすればよいでしょう?
内藤 「捨てたくない『理由』」を掘り下げていけばいいんです。たとえば「他人にとっては意味のないものかもしれないけど、自分にとってはかけがえのない宝物なんだ」「これは大切な思い出の品だから」「限定品で、いまは入手できないモノだ」「そもそも高価なモノだから、処分したくない」など、何かしら理由があるはずですから。そうしたアイテムは「使う/使わない」という判断基準ではどうにもできない、特別なモノ。理屈では処理できないモノなのだから、通常の片付け品とは別の扱いで「思い出」や「宝物」などのカテゴリーとしていったん箱などにまとめておきましょう、と提案します。
── 「使うモノ」「使わないモノ(不要品)」の他に、「思い出」という仕分け区分も存在する、と。
内藤 そうです。そして「思い出」カテゴリーの品は、ひとまず優先順位などは考えず、箱にまとめて通常の片付け作業から除外してしまいます。どうしても整理がつかなかった「思い出」の品々を思考の外に置いてしまえば心理的な負担は軽くなりますし、日用品の片付け作業がよりはかどるようになるでしょう。
とはいえ「思い出」アイテムは基本、日々の生活には関係のないモノ、今後何年も手にすることがないモノであることが大半です。まずは日用品の片付けを進めて「スペースができたら、収納場所の奥のほうにしまっておきましょう」と、整理の最終段階で扱いを考えることになりますね。その際、収納スペースがどうしても確保できなかったりすれば「minikura(ミニクラ)に預けてしまいませんか?」といったアドバイスもさせていただきます。
── 「それが必要である理由」「毎日の暮らしには不要だけど、どうしても捨てられない理由」など、整理収納にまつわる全ての「理由」に向き合うことから、片付けが始まるわけですね。
内藤 そうですね。人間は「理由」や「目的」を認識しないと、なかなか行動に移せませんから。「なんとなく」で始めた片付けがなかなか上手くいかない理由も、そこにあります。
私たち整理収納アドバイザーの役割のひとつは、そうした「理由」に気づいていただき、「なぜ片付けるのか」「どんな暮らしぶりを実現したいか」といった「目的」をユーザー様と共有した上で、ユーザー様の判断や行動へと繋げていくために背中を押すことだと捉えています。
もちろん、アドバイザーそれぞれに考え方やモノに対する解釈、整理収納に関するテクニックなどがありますから、片付けについて一概に「これが正解」というものがあるわけではありません。ただ、私は「理由」を意識していただくことを、まず重視しているんです。
片付けを堅苦しく捉えないこと。困ったときは専門家に相談を
── ここまでお話を伺って、少々大仰な表現かもしれませんが、片付けはとどのつまり「自分と向き合う作業」のように思えてきました。「自分の価値観とは?」「自分にとって本当に大切にしたいことは何か?」といった、本質的な問いかけが必要になるのでは、と。
内藤 そうした側面も、もしかしたらあるかもしれませんね。ただ、そう堅苦しく考える必要もありませんよ。片付けそのものは「これっている?いらない?」「どのくらいの頻度で使う?」といったシンプルな判断と分類の連続にすぎません。それに気づいていただくことができたら、あとは単純作業といってもいい。ましてや「片付けが上手くできないな」「どうしてもモノに執着して、捨てられない」など、自分を卑下する必要なんて全くありません。単に「理由」を意識するきっかけがなかっただけともいえますから。
今日からモノを片付ける際などに「必要な理由」「使わなかった理由」あたりを意識してみるだけで、モノとの付き合い方とか、優先順位の付け方が変わってくるかもしれません。どうしても片付けについて苦手意識が抜けなかったり、なかなか作業がはかどらなかったりしたら、われわれ整理収納アドバイザーに相談する、という選択肢だってありますからね。
そもそもの話として「本当に片付けが必要なのか」という視点も見落とせません。「家の中が散らかっていても、自分はまったく困らない」「多少、床にモノが放置されていても気にならない」ということなら、無理に片付ける必要はないんですよ。
── そうなんですか!?
内藤 はい、私はそう思います。片付けたい、と考えるようになったことにも「理由」はあるはず。「散らかった部屋で生活していると、なんだかストレスが溜まる」「床にモノが散乱していると、落ち着かない」「こざっぱりとした部屋で気分よく暮らしたい」といったマインドの問題もあるでしょうし、「別々に暮らしていた子どもと一緒に暮らすことになったから、一部屋を空けなくてはいけない」「単身赴任していた夫が帰ってくることになった」「子どもが成長したから新しいベッドを購入したいのだけど、置き場がない」など必要に迫られる状況になったから、どうにか対応するしかないという場面もあるでしょう。何かしらの「理由」があるから、片付けなきゃいけない。そうでなければ無理やりモノを減らす必要もありませんし「現状維持」という選択もあり得るでしょう。
ただ、何かしら困りごとがあったり、対応が求められたりして、モノを片付ける必要があるなら、それを解決するために少し頑張ってみましょうか……というのが、私のスタンスです。具体的には、モノの取捨選択について助言をしたり、後々困らないような整理方法で実際にモノをしまっていったりと、ユーザー様それぞれに合った形で片付けをお手伝いしていく。その際「収納スペースに入りきらなかったモノ」「手元になくてもいいけど、きちんととっておきたい『思い出』の品々」については、「minikura(ミニクラ)に預けるという選択もありますよ」と提案することもあります。
── minikura(ミニクラ)の「お片付けサービス」を利用したから言って、必ずminikura(ミニクラ)にモノを預けなければいけないわけではない、ということでしょうか。
内藤 そのとおりです。たしかにminikura(ミニクラ)は手軽で便利ですから、費用面などで納得できるのであれば、積極的に利用を検討してみることをおすすめします。実際、「これ以上、収納にモノが入らない」という状況になれば、外部収納に預けたり、友人・知人に譲ったり、処分したりする必要がある。そんな場面での選択肢のひとつとして、minikura(ミニクラ)はとても役立つサービスであることは間違いありません。
【後編に続く】